記帳指導で感じた自身の思い込みと現実とのギャップ

税理士会の会務に「記帳指導」があります。

記帳指導とは、開業したばかりの事業者に対して、記帳の仕方を指導する税理士としての一種の社会貢献?です。

昨年からこの記帳指導を担当していますが、これまでの自分自身の思い込みと現実とのギャップに少し驚いています。

記帳指導を担当しなければ感じられなかったギャップかなと思います。

良い勉強になっています。

目次

ギャップその1~簿記の知識がないのが当たり前~

税理士として仕事をしていると、簿記がとても身近に感じます。

むしろ、税理士試験に簿記論という科目もありますので、必ず簿記を勉強しています。

税理士を志す人は、最初に勉強するのが簿記だと思います。

もちろん最初に税法を勉強してから簿記を勉強する人もいると思いますが、早い段階で簿記を勉強することになります。

私も例外なく簿記3級から勉強し、段階を踏んで簿記論を勉強し、今は税理士として仕事をしています。

そんな道を歩んできたからだと思いますが、簿記がとても身近に感じています。

むしろ知っていて当然と思ってしまっている自分がいました。

それを記帳指導を担当することになって、簿記の知識がないのが当たり前なんだと気付きました。

勤務時代から、法人顧問を担当すると経理担当者がいるケースがほとんどでした。

担当者がいないとしても、社長が自ら簿記をある程度勉強されているケースがほとんどでした。

つまり、簿記の知識をある程度お持ちなので、それを前提でお話をしても通じるものがあったのです。

貸方借方から説明をする必要はなく、簿記の説明は省いた状態からのスタートでした。

それが記帳指導の対象の方においては、簿記の知識がないのがほとんどで、むしろそれが普通なんだろうなと気付きました。

生活の中で簿記なんて気にしませんし、貸方借方なんて不要ですもんね。

それが事業を開始されたことにより急に必要になってしまった。

しかも何も知らずに税務署からの指導で青色申告の届出を提出させられ、無理矢理記帳を開始せざるを得ないケースもあります。

そんな方たちに簿記の知識がないのは当たり前ですよね。

事業者が簿記の知識があって当たり前という思い込みが私にはありました。

しかし、そんなのないのが当たり前なんだと気付くことができました。

ギャップその2~家事按分を知らないのが当たり前~

記帳する場合には、事業としてかかったものを経費として計上します。

事業者であれば事業経費と個人経費はわけられる。

自分で使ったものですから、事業に必要なものなのか否かは容易に判断できる。

そう思い込んでいました。

しかし、それも違うんだと。

ご自分で営まれている事業は理解している。

それにかかった費用もなんとなくわかる。

ただ、どれとどれは経費に入れてよくて、どれは経費とはならないというある種の判断基準がわからない。

これは事業の為に掛かった経費です。

これは個人的なものです。

そこまではまだ大丈夫。

問題はここから。

事業に少しでも利用しているから全部経費に入れて良いですか?

場合によっては個人的に掛かったものも経費として入れて良いですか?

時として、ネットで見たんですが全部入れても良いんですよね?

なんて質問を受けます。

事業に100%必要な経費はご自分でもなんとなくわけられるようです。

難しいのが家事按分。

事業として利用した割合しか経費にできませんが、極端に全部入れて良いと思われている方もいれば、全部入れちゃいけないと思われている方もいます。

前者についてはネットの誤った情報を鵜呑みにしてしまっているケースですね。

後者はある意味損をしている。

この部分の按分というのは税理士としては当然にアドバイスをしますが、記帳指導をするまでは家事按分自体を知っていて当たり前だと思っていました。

これも知っているのが当たり前ではないのだと。

100対0で考えてしまう方が多い印象を受けます。

按分という方法を指導するのもとても重要だなと思いました。

ギャップその3~会計ソフトの利用が当たり前ではない~

記帳には会計ソフトを利用されている方が多いでしょう。

法人もですが、個人事業でも会計ソフトを利用されている方がほとんどだと思っていました。

青色申告であれば会計ソフトの利用が必須だと思っていましたが、そうではなかった。

パソコンを利用できない方もいらっしゃいます。

特に税務署の方に安易に青色申告を勧められ、何も知らずにとりあえず届出を提出された方。

記帳が必須であることの説明もなかったとおっしゃられている方もいました。

ご年配の方などにも青色申告を勧めるのはよろしいのですが、記帳が必須であること、手書きでの記帳は手間がかかることをきちんと説明するべきだろうなと思います。

手書きで青色申告の記帳をするのはとても大変だろうなと思います。

指導するこちらとしても正直パソコンが使えるのが当たり前と思い込んでおりましたので、指導の難しさを感じています。

もちろん精一杯頑張らせて頂きましたが、それでもご本人のご苦労を考えると心が痛みます。

経理をやられている方であればわかるかと思いますが、会計ソフト少なくともパソコンが使えない場合での会計記帳はとても大変ですよね。

安易に青色申告を勧められてしまい、何も知らずに記帳をするよう促される。

会計ソフトの利用が当たり前ではないということも前提に、青色申告の届出もケースバイケースで考える必要があるのではないかなと個人的には思います。

指導する側としても、パソコンが使えることを前提としてはいけないなと気付きを得ました。

ケースバイケースで指導方法を考えないといけないですね。

まとめ

昨年からの記帳指導の経験から気付いたギャップについて書いてみました。

会計畑・税務畑にいると、一般の方とのギャップに気付けないこともあります。

記帳指導によりそのギャップに気付く機会を与えてもらいました。

来年は担当するかわかりませんが、指導する場合には、何も知らないのが当たり前という大前提を忘れずにいたいと思います。

    

【編集後記】
記帳指導を一日に3件連続で行いました。
スケジュールの関係で自分からお願いしたのですが、正直きつかったですね。
次回以降はもう少し余裕を持って組みたいなと思います。
そして年末調整が近づいてきました。
少しずつ準備を進めたいと思います。

【家族日記】
子供たちが実家でキウイ狩りをしました。
キウイ狩りってあまり聞いたことがありません。
実家でキウイを作っているんですが、毎年大量に収穫できます。
これでもかというくらい採れるので、今年は子供たちがお手伝い。
子供たちも両親も楽しかったみたいで何よりです。

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