算定基礎届送られてくる時期となり、顧問先から書き方について質問がくるようになってきました。
我々税理士には日常的に労務に関する業務の質問が飛んできます。どこまで答えるべきなのか。どこまで答えられるようにしておくべきなのか。
税理士業務とは
税理業務は税理士法第2条に次のように定義されています。
第2条に規定する「税理士業務」とは、同条第1項各号に掲げる事務(電子情報処理組織を使用して行う事務を含む。)を行うことを業とする場合の当該事務をいうものとする。この場合において、「業とする」とは、当該事務を反復継続して行い、又は反復継続して行う意思をもって行うことをいい、必ずしも有償であることを要しないものとし、国税又は地方税に関する行政事務に従事する者がその行政事務を遂行するために必要な限度において当該事務を行う場合には、これに該当しないものとする。(国税庁HPより)
はい。わかりづらいですね。具体的な業務としては次の3つが同2条で規定しています。
①税務代理・・・税務申告書、申請書や届出書の提出
②税務書類の作成・・・税務申告書、申請書や届出書の作成
③税務相談・・・税法上の処理方法や税額計算の方法など、税金に関する相談業務
その他として、これに付随する会計業務、すなわち決算書の作成や会計帳簿の作成業務なども請け負うことができます。
社会保険労務士業務とは
私は社労士業務には詳しくないので、調べてみたところでの列挙にになりますが、下記の業務が独占業務のようです。
①1号業務・・・健康保険や雇用保険などへの加入や脱退の手続、助成金申請など
②2号業務・・・法律上作成が必要な労働者名簿や賃金台帳、就業規則や労使協定書の作成
その他、3号業務として人事や労務に関する相談業務が規定されていますが、こちらは独占業務として規定されていないようです。
やはり独占業務の内容からみても労務関係の業務については社労士がプロですね。
税理士には労務関係の質問も飛んでくる
上記に記載したように、税理士は税金関係、社労士は労務関係に関する業務が独占業務として規定されています。
資格の名称から当然といえば当然です。しかし、我々税理士は日常的に社労士業務、すなわち労務関係の相談を顧問先から受ける機会があります。
特に顧問として社労士が関与していないお客様に多い傾向があります。
勤務時代では、給与計算を社労士に依頼しているお客様でも、税理士に質問が飛んでくるところもありました。
この業界に入って最初は「なぜなんだろう」と思っていましたが、少しずつ感じてきたのは、毎月ご訪問させて頂いているので「一番相談しやすい」ということなのだと思います。これは嬉しいことですね。経営に関する悩みを打ち明ける、相談する相手として選んで頂けてるのですから。
上記で記載したように、労務関係に関する相談業務については社労士の独占業務ではないということも、税理士業務と社労士業務の曖昧さを生じさせている原因なのかもしれません。
でも労務関係のプロは社労士です。そこで悩むのが労務関係の相談は「どこまで税理士が答えるべきなのか、そしてどこまで答えられるようにしておくべきなのか」です。
我々税理士は労務関係のプロではありません。このモヤモヤなところはこの業界に入ってからずっと持っています。
どこまでは答えると自分で線引きを決めるのが大事
税理士として独立して、決めたことがあります。労務相談は社労士へ依頼するということです。餅は餅屋です。
労務に関する相談については、できるだけ労務のプロである社労士へ依頼するようにお客様には伝えるようにしています。
税理士である私が曖昧な知識でお答えしても、それが間違った方向にいってしまっては責任問題となります。もちろん調べてお答えしますが、頭を堅くして考えると労務相談については顧問契約書には記載していません。つまりボランティア業務となります。
何を堅いことをと考える方もいると思いますが、ひとり税理士としてやっていくうえではボランティア業務に時間を割いてはいられません。
労務関係も給与計算も全部やるという税理士事務所もあります。これはこれで素晴らしいと思います。でもマンパワーがある事務所では可能ですが、ひとり税理士の私にはできません。
私が労務相談で受けるのは本当に簡単な質問までと決めており、踏み込んだ質問がきた場合には社労士をご紹介するようにしています。素敵な社労士をご紹介できますので、自信をもってご紹介しています。
まとめ
算定基礎の時期ということで税理士業務と社労士業務について考えてみました。
顧問業務にはどうしても付随してくる労務に関わる業務ですが、「労務は労務のプロへ」が私の考え方です。
算定基礎の質問がこれからも飛んできそうですが、簡易的なものにはきちんと答え、複雑化しそうなものには社労士をご紹介させて頂こうと思います。