超高齢化社会となり、自分の財産を子ではなく、孫に残したいと希望される方が増えている印象を受けます。
自分の子もまた高齢というケースも多いですね。
90歳代の方の子は60歳代であることが多いです。
すると孫は30代だったり、40代だったり。
ひ孫がいても全く驚かない時代になってきました。
そんな時代に、自分の財産を可愛い孫に残したいと考えるのも自然な気がします。
ですが、そう簡単にはいかないのが日本の法律なんですよね。
そもそも孫に相続させることはできるのか
孫には相続権が認められるのかどうか。
そこがまず第一の問題ですね。
民法では、法定相続人として「配偶者」「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」と定めています。
「配偶者」と「子」はそのままイメージつくので問題ありませんね。
「直系尊属」とは、自分よりも前の世代の方、つまり両親や祖父母を言います。
「兄弟姉妹」もイメージつくので問題ありませんね。
上記からわかる通り、民法では孫は直接の相続権を持つとは規定していません。
「子」が先に亡くなっている場合には、「孫」が相続人となると規定しています。
つまり、「子」が先に亡くなっていない場合には、「孫」は相続人にはならない。
孫には相続権はないということになります。
そのまま相続が発生してしまうと、遺産は配偶者や子が相続するケースが多いです。
孫には相続されません。
ご本人の希望に添わない相続となってしまいます。
生前に対策をしておかないといけないということですね。
何もしなかったら遺産は配偶者と子あるいは親が相続すると考えておきましょう。
孫に「不動産」を相続させる方法
それでは、孫に遺産を残したい場合にはどうすれば良いのか。
方法は3つ考えられます。
遺言書を作成する方法
一番に考えられるのは、遺言書を作成し、「孫に不動産を遺贈する」と明記することです。
相続財産の分割は、遺言書があれば遺言書の内容を最優先で考えます。
遺言書がない場合には、法定相続人で遺産分割協議を行い、その遺産分割協議に沿って遺産を分割します。
その遺産分割協議に「孫」は入りません。
なぜなら孫は法定相続人ではないからです。
つまり、遺産分割協議ではなく、遺言書で遺産を分割してもらうように、生前に遺言書を作成しておく必要があります。
その遺言書に「孫に不動産を遺贈する」と明記しておけば、不動産を孫に相続させることが可能となります。
では遺言書を作成するにはどうすれば良いのでしょうか。
遺言書にはいくつか種類がありますが、一般的に作成されるのは自筆証書遺言か公正証書遺言が考えられます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言については、平成30年に民法改正があり、平成31年1月13日より自筆証書遺言の書き方が緩和されました。
これまでは全文書を自書しなければ遺言書の効力がありませんでした。
財産目録と呼ばれる財産の一覧もすべて手書き。
財産が多ければ多いほど労力がかかり手書きでは大変ですよね。
今回の民法改正でこの「すべて自書」が緩和されました。
財産目録においては、パソコンでも作成可能(各頁に署名押印は必要です)となり、作成労力はかなり緩和されました。
そしてもうひとつ大きな改正は、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになったことです。
令和2年7月10日から法務局での保管は開始されています。
ただし、法務局での保管を前提とするため、法務省令で定める様式に従って作成されていなければなりません。
余白の下限や片面のみ記載という制限もあるので注意が必要です。
遺言書の保管申請には1件3,900円の手数料が発生しますが、相続発生時の家庭裁判所での検認が不要となるので、相続人のことを考えると自筆証書遺言を作成する場合には法務局で保管してもらうべきと私は思います。
公正証書遺言
公正証書遺言の作成においては、民法第969条に規定があります。
つまり、その規定通りに作成しなければ効力が発生しません。
公正証書遺言は、公証役場へ遺言者が出向くのが一般的です。
しかし、事情によっては公証人が出張してくれることもあります。
身体が不自由で出向くことが難しかったり、病気で入院している場合など、出向くのが難しい場合には公証人に出張してもらうことも可能となります。
公正証書遺言は、遺言者が公証人及び2人以上の証人の前で、遺言内容を口授し、公証人が遺言者の口述を筆記し、公証人が作成した文章を遺言者及び証人に読み聞かせて承認を得る必要があります。
公正証書遺言は、紛失や改ざんされる心配がなく、自筆証書遺言のような家庭裁判所での検認も必要ありませんが、公証人の手数料と証人2人以上が必要となります。
自筆証書遺言、公正証書遺言の他に、秘密証書遺言という遺言もあります。
また、特別な遺言として、死亡危急者遺言、船舶遭難者遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言という遺言もあります。
今は新型コロナウイルスが蔓延している状況ですので、こういった遺言書の作成も可能性としてはあるのかなと思います。
養子縁組をする方法
次に考えられるのは、養子縁組により孫を「子」にする方法です。
法定相続人である「子」にしてしまう方法です。
「子」には実子以外に、「養子」も含まれているため、「子」として相続権を得ることになります。
そして相続が発生した場合には、遺産分割協議にその「孫」も「子」として参加します。
その分割協議において不動産を相続するようにすれば良いのです。
ちなみに、養子縁組をすると法定相続人が1人増えることになるので相続税の基礎控除額が増額します。
金額としては600万円。
600万円の非課税枠が増えるので相続対策として養子縁組をするということもありますね。
相続ではなく「生前贈与」する方法
もうひとつの方法は、相続が発生する前に、生きているうちに孫に生前贈与する方法が考えられます。
贈与の場合には、あげる人ともらう人の双方の承諾が必要です。
相続とは違い、あげる人もまだ生きていますので、あげる人の意思がそのまま確実に実現します。
ただし、贈与には贈与税がかかりますので、贈与する不動産の評価額によっては注意が必要です。
2021年現在ですと、暦年贈与か相続時精算課税制度で生前贈与することになります。
暦年贈与であれば年間110万円までの非課税枠を利用して贈与します。
この年間110万円の非課税枠は毎年あるので、複数年にわたって贈与が可能な場合には、毎年非課税枠内での贈与を繰り返す方法も考えられます。
不動産の生前贈与については、毎年繰り返す方法はあまり現実的ではありませんね。
次に相続時精算課税制度です。
こちらは非課税枠が2,500万円となり、超えた分には一律20%で贈与税が発生します。
ただし、相続が発生した時にその生前贈与した不動産を相続財産として加算して、まとめて相続税の課税対象となります。
その足し戻す財産の価額は生前贈与した時の評価額とされ、もし贈与税を納めていた場合にはその贈与税は相続発生時に控除されます。
まさに相続時に精算させる贈与ってことですね。
この相続時精算課税制度を適用する場合には、一度選択すると二度と暦年贈与には戻れない点に注意が必要です。
今年は相続時精算課税制度で贈与し、来年は暦年贈与でってことが出来ません。
今年相続時精算課税制度を適用して2,500万円の贈与を受けた場合、今年の贈与税額は0円です。
しかし、翌年に100万円の贈与を受けても暦年贈与の非課税枠110万円以内だから贈与税がかからないかというと、そうではありません。
100万円についても相続時精算課税制度が適用され、非課税枠2,500万円は残っていないので100万円に対して20%、つまり20万円の贈与税がかかります。
相続時精算課税制度を適用した場合には、一生涯で通算して非課税枠が2,500万円ということになるのです。
相続時精算課税制度を選択する場合には注意しましょう。
何か特例はないのかなって思いますが、生前贈与の色々な特例は、いずれも「金銭」の贈与に関する特例です。
教育資金の一括贈与、住宅取得資金の贈与、結婚・子育て資金の一括贈与など、特例は色々ありますが、いずれも「資金」の贈与が対象です。
不動産の贈与に関する特例はありません。
不動産を生前贈与する場合には、暦年贈与または相続時精算課税制度を適用することになります。
孫に相続させる際の注意事項
孫に不動産を相続させる場合には、以下の点に注意が必要です。
遺留分侵害
必ず注意しなければならないのが、孫以外の相続人とのトラブルです。
特定の孫に多くの不動産を相続させてしまうと、他の相続人が相続する遺産が減ってしまいます。
法律で守られている遺留分を侵害することとなり、最悪の場合には遺留分侵害額請求権を行使され、調停や訴訟にまでなることもあります。
遺留分とは、①法定相続人である配偶者②子や孫などの直系卑属③父母や祖父母など直系尊属、に法律上の認められている最低限相続できる割合をいいます。
兄弟姉妹には認められていません。
例えば、遺言で「すべての財産を特定の孫へ遺贈する」なんて書いてしまうと、他の法定相続人が相続できる割合がゼロとなってしまいますよね。
そうなると、ゼロとなってしまった法定相続人がその特定の孫に対して、遺留分侵害額請求権を行使することが容易に想像できるでしょう。
すべての遺産を特定の孫に相続させたいと願っていたとしても、相続発生後にその孫が他の相続人と揉めることは避けたいですよね。
遺産を残してあげても、そのお孫さんは非常に重い苦労を強いられることになります。
遺言書を作成する場合には、遺留分を侵害しないように作成してあげることも「争族」を回避する重要なポイントとなります。
その他、遺言書には相続人への「思い」も遺しておくべきだと思います。
なぜこの遺産はこの相続人へ相続させたいのか、をきちんと遺しておくと、他の相続人の理解も得られるかもしれません。
相続税の2割加算
孫に遺言や養子縁組により遺産を相続させると、相続税が2割増しとなります。
孫に不動産を相続させる場合には、孫が納める相続税についても考慮してあげることが必要です。
相続税は基本的に金銭納付です。
多くの不動産を相続させても、納税する資金がなければ不動産を売却しなければならないこともあります。
そうならないように、納税資金対策も合わせて検討することが必要です。
なお、子がすでに亡くなっていた場合に孫が相続する「代襲相続」である場合には、この2割加算の対象外となります。
小規模宅地の特例
孫が不動産を相続する場合には、小規模宅地等の特例が適用できない可能性があります。
孫が相続したから特例が適用できないのではなく、孫が要件を満たすかどうかが重要となります。
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方が生前住んでいた土地、事業を行っていた場合には事業を行っていた土地、貸地を所有していた場合には貸していた土地に対して、一定要件を満たす場合には50%から80%の評価減ができる特例です。
つまり、相続財産を減らせる特例ですが、孫が要件を満たさない場合には、この特例が適用できないことになります。
配偶者が相続すれば適用できたのに、孫が相続したことにより適用できなかったり。
場合によっては、孫以外の相続人が相続すれば相続税はなしにできたのに、孫に相続させたことにより相続税が発生してしまうケースもあります。
不動産については、生前贈与では特例はありませんが、相続税には特例があります。
適用できる特例が使えなくなることによる影響も考慮しなければなりません。
まとめ
孫は相続権を持たないため、孫へ遺産を遺すには生前に対策が必要となります。
その遺したい遺産が何かにもよって対策も変わります。
金銭であるか、不動産であるか、動産であるか。
それによって対策が変わります。
さらに2021年度税制改正大綱では相続税と贈与税の一体化の検討について触れられています。
暦年贈与の変更も考えられますね。
これからの動きにも注意しなければなりません。
【編集後記】
今週も基本4時起床。
途中何日か二度寝ありの週でした。
今日は大寒波が来ています。
非常に寒い朝ですが、体調管理には注意しないとですね。
今週から本格的に仕事始めの人が多いかと思いますが、
私は大晦日も元旦も仕事していたので何だか変わりなくです。
首都圏では緊急事態宣言が発令。
新型コロナウイルスに振り回された2020年。
2021年もコロナから始まるというのも辛いですが、
やるべきことをコツコツやるしかありませんね。
【家族日記】
今週からトイトレを始めた長男くん。
アンパンマンシールを貼るために頑張っています。
おしっこだけではなく、うんちもトイレでできて家族みんなで大盛り上がり。
長男くん頑張っています。
そして冬休み後半はスキー場に行って雪遊び。
かまくら作りにそり滑り、そして雪合戦。
雪を満喫できました。