相続による個人事業の承継では小規模企業共済の承継も検討しよう

個人事業主の多くが加入している小規模企業共済。

掛金の所得控除による節税や退職金の積立といった目的が多いかと思います。

親族内における個人事業主の事業承継では、小規模企業共済の承継も検討すべきケースがあります。

それは相続による承継の場合です。

満たすべき要件もありますが、満たす場合には、検討すべき事項ですね。

目次

小規模企業共済の承継通算制度

個人事業主が事業を廃止した場合には、一般的には解約をして共済金を受け取ります。

これが小規模企業共済に加入する目的でもあります。

会社員や公務員と違い、退職金がない個人事業主にとってはとても大事な老後資金となります。

しかし、小規模企業共済には、事業を廃止した場合でも、解約して共済金をもらわずに、契約自体を次の後継者に承継できる制度があります。

それが「承継通算制度」となります。

承継通算した場合には、旧契約者の掛金額及び納付期間が承継者へ引き継がれます。

ただし、これには要件があり、後継者が前事業主の事業全部を譲り受けた場合または相続により承継した場合に限られます。

さらに、配偶者または子供に限られており、1回きり可能となっています。

なお、承継通算の他に、同じような制度で同一人通算という制度もあります。

これは旧契約者と通算する者が同一の場合の制度です。

個人事業主が法人成りした場合などに申請可能となっています。

承継通算を検討するケースとは

承継通算をするべきなのか、共済金を受け取るべきなのか。

どんな場合には承継通算を検討すべきなのでしょうか。

まずは相続という観点からみていきましょう。

相続発生により小規模企業共済から共済金を一時金として受け取る場合には、死亡退職金扱いとなり相続税の対象となります。

この場合、退職金の非課税枠として「500万円×相続人の数」の対象となります。

一方、承継通算した場合にはどうなるのでしょうか。

承継通算した場合には、一時金としての死亡退職金を受け取りません。

しかし、一時金を受け取る権利を相続人が相続することとなるので、一時金として死亡退職金を受け取った場合と同様に扱うことができます。

つまり、非課税枠の対象となります。

相続税の観点からいうと、一時金として受け取っても、承継通算して一時金を受け取る権利を相続しても同じになりますね。

【参考 国税庁文書回答】
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/souzoku/250125/02.htm

では、共済金の観点からみていきましょう。

小規模企業共済は掛金の納付期間が20年未満で任意解約した場合には掛金合計額を下回ります。

事業を承継した後継者が、承継後に新規に小規模企業共済に加入する場合には、そこからまた20年のカウントが始まります。

しかし、承継通算した場合には、旧契約者の納付期間が引継がれますので、契約期間の観点からはアドバンテージが生まれます。

相続が発生する事業承継の場合には、納付期間が長期となっているケースが多いです。

つまり、承継した時点で20年を満たしていることもあるでしょう。

そんな場合には、承継者が新規で小規模企業共済を契約するよりも、納付期間を承継した方が、後々の受取額が増えることになります。

旧契約者及び後継者を含めた、親族単位における共済金受取額の観点からみると、承継通算するメリットがありますよね。

最後に、小規模企業共済にはもうひとつ大事な役割があります。

それは貸付制度です。

もしものときに事業資金が必要になった場合に、迅速に借り入れをすることができます。

その借入限度額も掛金納付額の範囲内かつ納付期間により限度額が変わります。

掛金の範囲内であるということは、後継者が新規で小規模企業共済の契約をした場合には、限度額が非常に少額となります。

しかし、承継通算した場合には、貸付金額の限度額も多くなります。

もしものときの備えとしては承継通算した方が後継者は安心できるでしょう。

以上3つの観点から承継通算を検討するケースをみてみました。

相続により配偶者やお子様が事業を全て承継した場合には、契約期間と貸付制度の観点から、承継通算も検討してみるべきだと思います。

まとめ

小規模企業共済は個人事業主の加入率は非常に高い印象を受けます。

事業承継相談を受けた際には、小規模企業共済に加入されているケースが多いですね。

相続時に事業の承継があった場合には、小規模企業共済についても検討する必要があります。

相続時には税金の面ばかりに目がいきがちですが、一歩下がって冷静に事業をについてみつめなおす事も大事なことだと思います。

そのひとつとして、小規模企業共済の承継についても検討してみる価値はありますね。

   

【編集後記】
今週は暖かい日々が続きましたね。
来週からはゴールデンウィーク。
決算が終わらずゴールデンウィークも仕事になりそうで怖い。
なんとか終わらせるように頑張ります。

【家族日記】
今週は結婚記念日があり、嫁さんとランチへ。
ふたりで食事するのはいつぶりだろうかと思う程ひさしぶりでした。
いつも子供たちも一緒だったので、ふたりでの食事はなんだか新鮮。
仕事に集中できるのも嫁さんの協力があるおかげですよね。
またふたりでランチにいきたいなと思います。

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