個人事業主の事業承継では借入金を引継ぐか否かを選択できる

個人事業主の事業承継の相談を受けると、必ず聞かれる質問に「借入金は引継がないといけないのでしょうか」があります。

後継者としてはいきなり多額の借入金を引継がないといけないとなると、承継する気持ちが揺らいでしまうものです。

そこで今回は現事業主が負う借入金について考えてみたいと思います。

目次

事業承継で借入金は引継ぐのは必須ではない

結論から申し上げますと、個人事業主の事業承継では、借入金は引継がなくても問題はありません。

個人事業の場合には、事業としての借入金であっても、その名義はあくまでも現事業主です。

現事業主名義の借入金は、事業を承継したとしても、必ず承継しなければならないものではありません。

承継しなくても良いし、承継しても良い。

どちらかを状況によって選択できることになります。

個人事業主の事業承継では、現事業主の廃業と後継者の開業という手続きを行います。

現事業主はあくまでも廃業することになり、後継者が新たに事業を開始したと扱われます。

つまり、事業主の名義が変わることになります。

名義が変わるので、現事業主名義の借入金まで引継ぐことは必須ではないということになります。

一方で、法人の場合には法人格として借入をしているので、借入金の名義も法人となっています。

法人の事業承継では株式と経営権を承継することになりますので、法人名義の変更は伴わず当然に借入金も引継ぐことになります。

代表が保証人になっているケースも多いかと思いますので、その保証人を後継者が引継がなければいけないという重い負担が伴います。

金融機関の承認も必要になります。

借入金を承継するか否かの選択ができる点においては、個人事業主の方が法人よりも承継のハードルは下がるのかなと思います。

引継がないといけないケースとは

個人事業主の事業承継では、借入金の引継ぎは必須ではありません。

しかし、借入金の名義は現事業主であったとしても、事業に紐付いた借入金であるため、事業自体の資金繰りに大きな影響力を持っています。

仮に借入金を引継がないとなると、現経営者はその返済にあてる資金が必要となります。

承継する時点で「預金残高>借入金」である場合には、借入金の金額を除いた預金残高を後継者が承継することになるでしょう。

そうなった場合、預金残高は大きく減額することになりますので、事業資金が大幅に減ります。

残った資金で事業資金を回すことができるのであれば問題ありません。

あるいは、後継者名義の預金残高が多額にあり、それを事業資金として投入することができるのであれば問題ありません。

しかし、多くの場合には、事業資金を補うために借入をしています。

その借入金を一括で返済しても問題ない状況以外には、預金と借入金をセットで承継する必要がでてきます。

資金不足となると、事業は回りませんからね。

借入金は引継がないけど、預金だけ引継ぐことも可能ではあります。

そうした場合、現事業主が事業を行わないのに借入金だけを返済する必要があります。

小規模企業共済の共済金や、保険の解約返戻金などで返済することも選択肢としてはありますが、現実問題としては老後の生活資金に回すことになるでしょう。

つまり、預金のみを引継ぎ、借入金は引継がないという選択は、現事業主の生活を考慮すると非現実的となります。

多くの場合には、預金と借入金をセットで承継する必要がでてきます。

借入金は承継することもできるけど、しないこともできる。

しかし、承継する必要があるケースが多いのが現実です。

借入金対策としてやっておくべきこととは

現経営者が、借入金対策としてやっておくべきことは、老後資金とは別に借入金返済に充当できる保険金を用意しておくことが重要だと思います。

なんだよ、保険かよ…って思われるかもしれませんが、これはとても重要だと思っています。

借入金を返済する資金があれば、後継者は借入金を引継ぐ必要がなくなります。

後継者としては、借入金を引継がず、預金は引継げる状況がベストですよね。

そのような状況を現事業主が準備してあげることが事業承継をスムーズに行うためには大事になるのではないでしょうか。

現事業主の借入金を承継する必要がある状況になると、後継者の金融機関からの信用力が問われます。

現事業主の場合には、借入実績もあり、返済実績もあり、信用力があるため融資を受けることができています。

これが事業承継により後継者名義の借入金になるとすると、後継者の信用力が問われます。

今までは現事業主の信用力からすんなり通っていた融資が、後継者になってからは審査が厳しくなるなんてことはよくあります。

最悪の場合には、後継者への借入金の引継ぎが認められず、やむなく現事業主が一括返済せざるを得ないなんてことも起こりえます。

そうなった時にも、事業資金とは別に、そして老後資金とは別に、返済資金としての準備金があれば、事業承継はスムーズに進みます。

後継者は承継後にコツコツと信用を積み上げていくことになります。

その積み上げ期間を現事業主が資金面でバックアップしてあげることが後継者への思いやりになるのではないでしょうか。

承継前の後継者は専従者として事業をサポートしてるケースがほとんどです。

自分名義での事業は承継してから積み上げていくことになります。

それまではあくまでも現事業主名義の事業です。

信用も現事業主に紐付いています。

承継した後は後継者に紐付く信用を積み上げなければなりません。

事業に専念できるように、資金繰りの問題を和らげてあげることが、後継者にしてあげられるサポートのひとつとなると私は思います。

そして現事業主がやっておくべきことと合わせて、後継者自身もやるべきことがあります。

それは、金融機関の担当者とコミュニケーションを取るように努めること。

自分は事業主ではないからコンタクトを取る必要がないなんて思っていてはいけません。

自分も次期後継者である自覚を持ち、積極的に金融機関の担当者とはコミュニケーションを取りましょう。

現事業主が銀行へ伺う際には同行したり、用があって銀行に伺った際には挨拶をしたり。

基本的なコミュニケーションは取るようにしておきましょう。

そして、個人での借入金がある場合には必ず期限内に返済すること。

預金残高をできる限り多くしておくことなど基本的なことがあげられます。

現事業主も後継者も、能動的に事業承継に取り組む姿勢がとても重要になってくると思います。

まとめ

個人事業主の事業承継での借入金の取り扱いについて書いてみました。

引継ぐか引継がないか。

引継がなければならない状況を作らないことが大事になってきます。

あくまでも、選択できる状況を作ってあげること。

それが現事業主が後継者にしてあげられる最大の思いやりなのではないかなと思います。

   

【編集後記】
昨日からGWがスタート。
コロナがまだまだまん延中ですね。
旅行に行かれている方もいますし、自粛で自宅から出ないようにしている方もいます。
正直、正解はないのかなって思います。
経済を考えると自粛は悪、医療従事者やまん延のことを考えると旅行は悪。
非常に難しい選択だなと思います。
どちらにしても、常にコロナ対策を怠らないことが大事になるんだろうなと。
ひとりひとりの基本的な行動が大事になってきますよね。

【家族日記】
息子くんとふたりで実家にお泊まり。
幼稚園で疲れてしまい18時には寝ちゃったけど、ママ抜きでもお泊まりできました。
これから男子チームとして色々なところに出かけたいなと思っています。
どこ行きたい?って聞くと、アンパンマンミュージアムと返ってきます。
コロナが落ち着いたら連れて行ってあげたいなと思います。

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