非上場株式の時価はいくらなのか①

日本における小規模事業者は、上場していない法人あるいは個人事業主です。

今回考える非上場株式は、個人事業主ではなく、法人格を有し、その法人の株式を所有している株主をメインで考えてみたいと思います。

株式と聞くとテレビでよく見る日経平均株価を想像する方が多いかと思いますが、あれはいわゆる「上場」している会社の株価です。

日々株式を売買しており、客観的にその売買時の時価を容易に知ることができます。

しかし、日々売買を行わない小規模事業者である法人の株式(以下、非上場株式といいます)は、時価はいくらなのでしょうか。

小規模事業者の多くはオーナー企業であり、株式をオーナー一族が所有しているケースが圧倒的に多い。

そのオーナー一族が所有する株式を、事業承継等で譲渡しようとした際、いくらで譲渡すれば問題ないのでしょうか。

上場株式の売買はその時の時価です。

であれば上場していない非上場株式を譲渡する場合も時価となるのが容易に想像できますね。

その時価はどのように計算すれば良いのかについて、書いてみたいと思います。

目次

非上場株式の客観的価値は把握が困難

上場株式の取引価格は、誰でもわかる客観的な価値により行われています。

今ではネットでも株取引が可能ですので、やっている方も多いのではないでしょうか。

スマホでその日の取引価格を容易に検索できますし、その価格で売買することができます。

その取引価格が非上場株式では明確ではありません。

非上場株式も上場株式のように取引できる市場があれば話は別ですが、非上場株式の取引は基本的に客観的に価値を表現することが困難です。

稀に数年前に譲渡により取得したというケースもありますが、その時の譲渡価額と現在での価値は異なります。

上場株式でもそうですよね。

日々時価が変わります。

数年前の時価を現在の時価にあてはめるのは無理があります。

非上場株式の客観的な価値を把握するとは困難であることを、まず理解しておかなければなりません。

評価方法について基本通達に定めがある

非上場株式は客観的に価値を把握するのは困難であるのはご理解頂けたでしょうか。

では、譲渡や贈与する際にはいくらでやれば良いのか。

言い値?

そんなんでは問題ありありですね。

なので、非上場株式の評価方法については、相続税、所得税、法人税でそれぞれ基本通達により定めがあります。

細かい評価方法は割愛しますが、採用すべき時価によって選択する基本通達も変わってくることに注意が必要です。

ここで言う基本通達とは、上級行政庁(つまり国税庁というお偉いさん)が、その所管行政の統一を図るために、下級行政庁(つまり税務署職員さん)に対して法規の解釈や運営方針等について指図しているものです。

課税現場で税務署職員さんが迷わないように、法令解釈等について明示してくれているのです。

つまり、通達は法律ではありませんが、現場ではひとつの指針となる大事な規定となります。

そんな基本通達に非上場株式の評価方法が定められています。

実務においては、これらの基本通達の定めに沿って非上場株式を評価するのが一般的です。

ここで注意しなければならないのが、基本通達は法律ではなく、現場の指針であるという点です。

日本国憲法第84条において租税法律主義が規定されています。

これは簡単にいうと、税金を課するには国会で定めた法律に基づかなければならないというものです。

基本通達は法律ではないと申し上げました。

つまり、課税は通達に基づかなくてもこの租税法律主義には反することにはなりません。

何が言いたいかというと、基本通達に定める評価方法が客観的価値を表現していないと合理的に説明ができる場合には、他の評価方法で評価しても良い、むしろ、他の方法で評価する必要があるということです。

とは言っても、実務の現場ではこの基本通達に沿って評価するのが大多数を占めます。

基本通達による評価額と、他の方法による評価額に大きな乖離がある場合などには、納税者側と課税庁側で度々争いが生じています。

それだけ客観的価値を表現するのが難しいということですね。

売手と買手が個人か法人かにより適用通達が異なる

評価通達が相続税法、所得税法、法人税法にそれぞれ定めがありますが、どの基本通達を選択すればよいのか。

これは売手と買手が個人か法人かにより変わります。

個人が個人に譲渡する場合

個人から個人に譲渡する場合には、売手も買手も相続税法上の時価を採用します。

つまり、相続税法における基本通達を選択します。

個人から個人への売買においては、売手と買手の時価が一致することになります。

個人が法人に譲渡する場合

個人から法人に譲渡する場合には、売手と買手で採用する時価が変わります。

まず売手である個人は、所得税法上の時価を採用しますので、所得税法における基本通達を選択します。

一方、買手である法人は、法人税法上の時価を採用しますので、法人税法における基本通達を選択することになります。

売手と買手で時価が変わることになりますので、注意が必要ですね。

法人が個人に譲渡する場合

法人から個人に譲渡する場合も、売手と買手で採用する時価が変わります。

まず売手である法人は、法人税法上の時価を採用しますので、法人税法における基本通達を選択します。

一方、買手である個人は、所得税法上の時価を採用しますので、所得税法における基本通達を選択することになります。

個人から法人への譲渡と同様に、売手と買手で時価が変わることになりますので、注意が必要です。

法人が法人に譲渡する場合

法人から法人に譲渡する場合には、売手と買手の時価が一致します。

売手も買手も法人税法上の時価を採用しますので、法人税法における基本通達を選択することにります。

  

つまり、売手と買手が個人同士、あるいは法人同士であれば採用する時価は一致しますが、異なる場合には採用する時価も異なることになります。

まとめ

今回は非上場株式の時価について簡単に書いてみました。

時価といっても売手と買手により変化します。

ここがまた難しいんですけどね。

もう少し細かいところは、次回以降に書ければなと思います。

  

【編集後記】
コロナの罹患者が増えていますね。
顧問先の社長もコロナに感染されました。
社長が急遽不在となった場合の対応については、常日頃から考えておかなければならないなと改めて感じました。
ひとり税理士の自身もそうですね。
リモートで業務ができる状態にはしてありますが、業務が不能となった場合のリスク回避も大事だなと改めて。
色々考えなきゃなと思っています。

【家族日記】
お盆休みはお墓参りと両実家へお泊り。
子供たちは楽しめたようです。
親戚もコロナに感染してしまい、みんなで集まることはできませんでした。
コロナの影響はいつまで続くのか…
そしてお家でアイスケーキとお寿司でママのお誕生日会。
子供たちが大好きなメニューでどっちが主役なのか。
まぁそんなもんですよね。

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