前回は売手と買手が個人か法人かにより、非上場株式の時価は変わると書きました。
時価が変わるのは、非上場株式の評価方法を規定している基本通達が変わるからでしたね。
今回は簡単に税法毎の評価方法について書いてみたいと思います。
相続税法上の時価
相続税法上の時価を採用するのは、個人間で譲渡するケースでした。
相続税法上の時価は、株主の所有する株式の状況により、さらには会社の規模に着目して算定していきます。
株主の株式所有状況とは、一族で多くの株式を持っているか否か。
一言でいうと同族株主かどうかにより評価方法が異なることになります。
一人の株主とその親族で総議決権の30%以上を保有している場合には、その株主およびその親族は同族株主となります。
ただし、一人の株主とその親族で総議決権の50%超を保有している場合には、その筆頭株主グループのみが同族株主となります。
例えばですが、創業者一族で55%を所有している場合で、第三者グループが45%を所有している場合には、創業者一族のみが同族株主となり、30%以上を所有している第三者の株主グループは同族株主にはあたらないことになります。
多くの小規模事業者は、創業者一族が株式の100%を所有していますね。
稀に第三者が株主を構成しているケースがありますが、多くはほぼ創業者一族で所有しています。
では、同族株主に該当するか否かの判定はいつするのか。
譲渡する前の株主構成で判断するのか。
譲渡した後の株主構成で判断するのか。
結論は後者となります。
株式を譲渡した後の株主構成により判断することになります。
譲渡により株式を「取得する者」がこの同族株主に該当するかどうかで判断します。
筆頭グループである創業者一族間での譲渡は、「取得する者」も同族株主に該当することになりますね。
同族株主に該当する場合には「原則的評価方法」により、該当しない場合には「特例的評価方法」である「配当還元方式」により評価することになります。
それぞれの評価方法の詳細は割愛しますが、一般的に原則的評価方法の方が株価は高くなります。
原則的評価方法の場合には、配当や利益等をベースに計算する類似業種比準方式と、純資産ベースに計算する純資産価額方式を採用して算定します。
会社規模によっては折衷となります。
一方で配当還元方式の場合には、配当金をベースに算定することになります。
いや~難しいですよね。
率直に言うと、株価算定は一般の方にはハードルが高いと思います。
算定の際は税理士に依頼されることをお勧めしますね。
所得税法上の時価
所得税法上の時価を採用するのは、法人から個人へ、あるいは個人から法人へ譲渡するケースで、個人側の時価を規定しています。
所得税法上の時価は下記①~④により算定されます。
①売買実例
②他の株式で類似するものの価額
③公募価格
④純資産価額等を参酌した価額
一般的には①か④と言われますが、①は第三者との取引価額であり、算出方法も妥当であれば問題ないかと思いますが、基本的に疑問が生じます。
よって④がベターとなりますね。
④については基本的に相続税法上の時価を参考にしますが、一部異なる点があるので注意が必要です。
相続税法上の時価を算定する際の同族株主の判定は「譲渡後」の株主構成にて行いますが、所得税法上の時価を算定する際には「譲渡前」の株主構成により判定します。
その他、「小会社」として評価するなど、これら以外にも細かな点で異なります。
法人税法上の時価
法人税法上の時価を採用するのは、法人から個人へ、個人から法人へ、さらに法人間での譲渡するケースです。
法人税法上の時価は下記①~④により算定されます。
①売買実例
②他の株式で類似するものの価額
③公募価格
④純資産価額等を参酌した価額
あれ、所得税法上の時価と似てますね。
というより、同じですね。
そうなんです。
基本的には所得税法上の時価と法人税法上の時価には大きな相違はありません。
ただし、同族株主の判定において大きな違いがあります。
所得税基本通には「株式の譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること」とはっきり規定されています。
このような規定が法人税基本通達にはありません。
ではいつの時点で判断すればよいのか。
結論としては「譲渡後」の株主構成により判定することが妥当だと思います。
ただし、課税上の問題があるかどうか個々に判断する必要がありますので、ご注意ください。
まとめ
相続税法上の時価、所得税法上の時価、法人税法上の時価についてざっくり書いてみました。
上記だけ読んでも株価の算定は不可なのはおわかりかと思います。
特に相続税法上の時価について「原則的評価方法」「配当還元方式」について書こうとすればそれだけで相当なボリュームになります。
色々なサイトで上記方法は説明されていますが、正直一般の方が読んでも意味不明です。
非上場株式の評価については、顧問税理士に依頼されるといいと思います。
顧問税理士に断られたという事例を多々経験していますが、税理士でもできない方が多くいる分野ということです。
顧問税理士に断られた際には、スポットで別の税理士を探してください。
見つからない場合には、当事務所へお問い合わせ頂ければ対応は可能です。
くれぐれもネット記事を読んでご自分で算定するなんてことがないようにご注意くださいね。
ネットには誤りも多いですし、何より一般の方が算定できるような仕組みではありません。
【編集後記】
自分自身に負荷をかけることはとても大事だなと思います。
独立すると上司がいません。
自分で自分に課題を設け、その課題を解決していく必要があります。
現状でも満足できていないので、少しずつでも成長できるように意識的に自分へ負荷をかけていきたいと思っています。
かけすぎも良くないですので、適度にですけどね。
【家族日記】
夏休みが終わり、登校登園が始まりました。
コロナが拡大していることもあり、夏休み中にワクチンを接種させました。
副反応もなく、元気だったので一安心です。
学校閉鎖や学園閉鎖がないといいなと願っています。